本日も乙

ただの自己満足な備忘録。

「テクニックに走らないファシリテーション」を読んだ

最近まで「テクニックに走らないファシリテーション」の輪読会をやっていました。

blog.jicoman.info

ファシリテーションについて学ぼうと思った経緯については上の記事に書いていますが、以前に主催した勉強会にて、LT後の質問や投げかけ、雑談時の話の振り方が下手くそで改善したいと思ったのがきっかけです。仕事においてもプロジェクトリード、チームリードにおいて定例会議やスポット会議をやっているときに会議における進行や成果がイマイチに感じたのでうまくなりたいと思った次第でした。

本について

テクニックに走らないファシリテーション -話し合いがうまく進む2つのセンスと3つのスタンス
米井隆(著), 岩元宏輔(著), 森格(著), 蔵田浩(監修)
産業能率大学出版部 (2021-04-01T00:00:01Z)
5つ星のうち3.5
¥1,980

本書は8章で構成されています。8章の鼎談は本書が生まれたきっかけや内容に対する補足がメインとなっており、実質は7章に内容が記載されています。

  • 第1章 ファシリテーターとは
  • 第2章 ファシリテーターとして磨いていきたい2つのセンス
  • 第3章 ファシリテーターとして持っておきたい3つのスタンス
  • 第4章 経験する場をつくる
  • 第5章 ファシリテーションの基本技術
  • 第6章 対面場面におけるファシリテーション
  • 第7章 オンライン場面におけるファシリテーション
  • 第8章 筆者3人の鼎談

「テクニックに走らない」とは

本書では巷に出ているファシリテーションに関する記事や書籍にかかれている小手先テクニックによるファシリテーションを否定しています。それはファシリテーションのやり方は人それぞれであり、会議の目的や場の流れ、参加者の意図を汲みしない画一的なテクニックや言い回しをしても場が白けるだけだということです。

本書におけるちゃんとうまいファシリテーターはテクニックから入るのではなく、テクニックの前段にある、「センス」と「スタンス」が大切だと説いています。「センス」と聞くと生まれ持った素質のような気もしますが、本書では「センス」は磨けるものであり、「センスはジャッジの連続から生まれる」と主張しています。ただ、「センス」ばかり磨いても「スタンス」がなくなればセンスがテクニック化するとも説いています。スタンスがあるからこそ、センスが磨かれるのです。

ファシリテーターの思考回路として「観察→解釈→行動」のループを回すことだと書かれています。このループをうまく回せることが、ちゃんとうまいファシリテーターになれるということです。このループを上手く回すために「センス」と「スタンス」が必要ということです。

センスを磨くには

本書では「センス」を「目利きのセンス」と「行動選択のセンス」の2つに分類しています。「目利きのセンス」は先ほどの思考回路ループにおける「観察→解釈」の部分であり、「話し合いの目利き」ということです。「話し合いの目利き」では、4つの観点から説明されており、本書ではそれぞれを磨くための心がけについて説明されています。

「行動選択のセンス」は先ほどの思考回路ループにおける「行動」の部分です。行動選択には「見守る」と「働きかける」の2つに分類され、後者はさらに「質問する」「提案する」のアクションに分かれます。行動選択のセンスを磨くには、会議などに関わらず日常生活の行動選択において「なぜ、そうしたのか?」と認知し自分に問いかけをすることと「そしてどうなったのか?」に目を向けて検証すること、認知→検証のサイクルを回し続けることだと書かれています。

スタンスを持つには

本書では3つのスタンスについて説明されています。1つ目が「自然体」。誰かの真似をしたりするのではなく、自分なりのファシリテーションへの姿勢を持つというものです。相手の先入観を持たない、自分の心の声に従っている、他人と比較しないことが大切です。
2つ目が「配慮」。ヒト・モノ・コトへの配慮が必要です。ヒトに関しては会議などの話し合い以外の人間関係が場に影響するということで、日頃の情報収集や関係構築が重要です。 3つ目が「学習者」。つねに学び続ける姿勢です。同じ体験をしても人によって成長の度合いは異なります。それは、経験から良質な学びを得ているかどうかによる違いだということです。本書では「経験学習モデル」について説明されており、体験から良質な学びを得るための方法について説明されています。

ファシリテーションの経験を積む

本書の後半はファシリテーションの経験を積むための方法や基本技術についての解説がメインです。

いきなりファシリテーションをするのはハードルが高いため、最初はサイレント・ファシリテーションによってファシリテーターになりきって言動についてチェックし、2段階目は影のファシリテーターとして、話し合いの場においてファシリテーターを支援する言動をします。そして最終段階でファシリテーションの実践をしていきます。

ファシリテーションの基本技術では、時系列にそって7つに分類されています。話し合いの事前は「段取りの技術」。当日は「場を活性化させる技術」「意見を引き出す技術」「議論を可視化する技術」「発散・収束・まとめの技術」「時間管理の技術」。そして事後は「アフターフォローの技術」です。ある種のテクニックですが、本書の前半にセンスとスタンスについて学んでいるからこそ後半で解説することで、ファシリテートしていきやすくなると思います。

感想

テレビやカンファレンスのうまい司会やファシリテーターを見ていると天性のものであり、自分は上手くなるのが難しいのだと思っていましたが、本書ではうまくなるためのセンスを磨くための日頃の心がけについて紙面の多くを割いて解説されています。中には自分に合わなそうなものもありますが、いくつかを選択して日頃から意識し続けることでファシリテーション力が上がっていくのだと思うとやる気が出てきます。本を読んでだけでファシリテーションがうまくなるわけはなく、実践をしないと上達はしません。上達するために何をしたらいいのかについても紹介されておりファシリテーションを一から実践を通してうまくなりたい人にとって良い本だと思いました。

前半のセンスとスタンスについてボリューム多く割いた分、後半部分の技術や具体方法についてやや内容が薄い気がしたので別の書籍や参考資料を読むとより理解が深まると思います。

参考資料