今まで本の読み方について気にすることがありませんでした。気になる箇所があればページの角を折ったり、ペンで線を引いたりするぐらい。読んでもすぐに忘れてしまい、身につかないこともしばしばありました。1冊の本を自分の血肉と化すまで読み抜く、ということをしてこなかった自分にとって本書はとても刺さりました。
この本に出会ったきっかけは、『アーキテクトの教科書』を書店で手に取ったことでした。この本でお勧めの書籍として『本を読む本』が紹介されていました。冒頭に書いたように読書技法について知りも考えもしてこなかったので、とても気になっていました。書店内を探したら『本を読む本』を見つけたので一緒に購入しました。
- 本を読む目的
- 良書とは
- 読書方法
- 本書を読んで思ったこと
- 最後に
本を読む目的
本書では、本を読むには2つの目的があり、それぞれに合った読書方法を選ぶべきとしています。
- 情報を得るための読書
- 新聞・雑誌、ハウツー本、技術書 etc
- 情報量を増やせるが、理解を深められない
- 理解を深めるための読書
- 以前に読んだけど完全に理解できなかった本
- 自分の理解を上回る本を読み直すことで理解を深められる
本書では1冊の本を徹底的に読みぬく「分析読書」という方法は「理解を深めるための読書」において実践すべきと書かれています。後で紹介しますが、「分析読書」はとても時間と手間がかかります。すべての本に「分析読書」をするのは時間的に困難です。そのため、本当の良書に対してのみ分析読書をするに値するとされています。
良書とは
人によって良書は異なりますが、本書では「自分の力以上の難解な本であり、読者の心を広く豊かにする。1万冊に1冊しかない」本が良書だとされています。楽に読める本ばかりでは、読める本の数は増えていくが、読者として成長していきません。今の自分の力以上の本に取り組むからこそ成長し、心が豊かになっていきます。
読書方法
本書では読書レベルに応じて以下の4つの読書方法を紹介しています。
初級読書: 読書の第一レベル
「その文は何を述べているか」を読み解けること、つまり読解力を求められます。
- 第一段階: 読み方準備期(6〜7歳レベル)
- 第二段階: 簡単な文・本を読む
- 第三段階: 文脈を辿って知らない用語の意味を掴んだりする
- 第四段階: 習得した読書技術に磨きをかける(高校〜大学レベル)
点検読書: 読書の第二レベル
拾い読み、下読みです。ほとんどの本はこの点検読書で済ませ、本当に読み抜く価値がある本は「分析読書」に進みます。
- 問うべきこと
- 「その本は何について書いているものであるか」
- 「全体的に何を主張しようとしているのか」
- 「どのような構成で概念や知識を展開しているのか」
第一段階: 下読み(入念に読む必要があるかを調べる)
所要時間: 数分〜1時間
- 表題・序文
- 目次
- 索引
- カバーに書いてある謳い文句
- 要となるいくつかの章のはじめ・終わり(要約)
- 所々を拾い読み、最後の2〜3ページ
第二段階: 表面読み
- 難解な本であってもとにかく読み通す
- 理解できない箇所は調べたりせず、飛ばしてどんどん読みつづける
- 脚注、引用文献などは読まない
補足: 目の動き(速読テクニック)
- 目の固定・逆戻りを矯正するべき
- 自分の手や指をページの上において、だんだん速く動かす練習をする
- 多少無理をしても、この手についていくよう努力する
- 手を動かすことで、速く読めるようになるだけでなく、読書の集中力を高めるのにも役立つ
分析読書 — 読書の第三レベル
本書のメインコンテンツとなります。 一冊の本を自分の血肉と化すまで徹底的に読み抜く。理解を深めるための読書です。
- 問うべきこと
- 「この本は全体として何に関するものか」→ 第一段階
- 「何がどのように述べられているか」→ 第二段階
- 「その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か」→ 第三段階
- 「どのような意義があるのか」→ 第三段階
- なぜそれを知ることが大事なのか
- それを知ることは読者にとって重要か
第一段階: 概略 — 何についての本なのかを見分ける
- 規則1. 種類と主題で分類する(点検読書)
- フィクション: 小説 etc
- 教養書: 知識を伝える、技術書 etc
- 理論: 事実を教える(「〜である」)
- 実践: 方法を教える(「〜べきである」「よい」「わるい」「目的・手段」)— 例: 手引き、解説書、技術書
- 規則2. 本全体が何に関するものなのかを2〜3行で述べる(著者の意図・著者が言いたいこと)
- 規則3. 本の主な部分でアウトラインを作る(マインドマップ、グラフィックレコーディング、各章の要約)
- 規則4. 著者が解決しようとしている問題を明らかにする(本は答えを教えてくれるが、質問は教えてくれないのでその問いを作る)
第二段階: 解釈 — 内容を解釈する
- 規則5. キーワードを見つけて、著者と折り合いをつける
- 折り合い = 読者と著者で言葉の意味について理解すること
- キーワード = 著者が特殊な意味で使っている言葉
- 規則6. 重要な文を見つけて、著者の主要な命題を見つける
- 命題 = ある事柄に対して、著者が肯定か否定するもの
- 規則7. パラグラフから著者の論証を見つける。またはいくつかの文を取り出して論証を組み立てる
- 論証 = ある結論を導くための根拠・理由を示す一連の文(パラグラフ)
- 規則8. 著者が解決した問題・解決していない問題を明らかにする
第三段階: 批評 — 知識は伝達されたか
(A)知的エチケットの一般的心得
- 規則9. 概略(第一段階)と解釈(第二段階)が完了しないまま批評に入らない
- 「分かった」ら、「賛成」「反対」「判断保留」の判断を下し根拠を示す
- 「分からない」は本に対する正当な非難とする批評的判断である
- 規則10. 反論は筋道を立てる。喧嘩腰の反論は控える
- 規則11. 批評的な判断をするには、根拠をあげ、知識と個人的な意見を区別する
- 知識 = 何らかの証拠に裏付けられた意見
- 意見 = 裏付けのない判断
賛成か反対の判断を下すために必要なこと: 1. 感情的になることを認める 2. 読者の立場、先入観を明らかにする 3. ただの攻撃をしない(根拠がないのに非難したり、自分の思い込みが絶対だと思い込まない)
(B)批判に関して注意すべき事項
反論の心得: 立証できない場合、著者の主張に賛成しなければならない
- 規則12. 著者が知識不足である点を明らかにする
- 規則13. 著者の知識に誤りがある点を明らかにする
- 規則14. 著者が論理性に欠ける点を明らかにする
- 規則15. 著者の分析や説明が不完全である点を明らかにする
シントピカル読書 — 読書の第四レベル(比較読書)
今までの読書方法とは路線が変わります。 1つの主題(問い・テーマ)について何冊も相互に関連づけて読みます。
- 問うべきこと
- 「この本は全体として何に関するものか」→ 第1〜4段階
- 「何がどのように述べられているか」→ 第1〜4段階
- 「その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か」→ 第5段階
- 「どのような意義があるのか」→ 第5段階
準備(1と2は順不同)
- 主題に関する文献をリストアップする
- リストアップした書物をすべて点検読書する(主題に関連するかを判断する。点検読書していくうちに、何が重要なのかを見分けることができる)
第一段階: 主題に関連する箇所を見つける
1冊の本をくまなく理解するより、その本が自分にとって役立つかを見極める
第二段階: 著者に折り合いをつけさせる(最も難しい)
- 読者が特定の著者に偏らない用語を決めて、著者に折り合いをつけさせる
- 多数の本・著者が、すべて同じ言葉・同じ意味で使っているとは限らない
- 特定の著者の用語の使い方を受け入れてはいけない
- 複数著者が同じ意味で使っていても偶然かもしれないので同様
第三段階: 質問を明確にする
質問リストを用意して、各著者から答えてもらう
第四段階: 質問に対する著者の考えを整理して、論点を明確にする
著者の考えがそれぞれ異なる場合、意見を整理する
第五段階: 主題について質問と論点を整理して論考を分析する
本書を読んで思ったこと
点検読書の段階で難しい
まずは拾い読み、下読みが難しい。1冊の本を丁寧に読みすぎてしまうので数分から1時間で読めることがなかなかできません。ハウツー本は前半に重要なことが書かれているのでわりと簡単ですが、技術書はなかなか難しいです。
しかし、表題や帯、序文や目次を読むことでその本の構成や主張、流れについてはなんとなく理解することができます。その段階で、自分にとって通読する価値があるかを判断する、というやり方なら良いと思いました。
まずは読み通すことが大事
完璧主義な気質なので、最初から1文1文をしっかり理解しようと読んでしまいがちです。1つの文の意味がわからなければ何度も手戻りして読んでしまうので時間がとてもかかります。それが面倒になってしまい途中で読むのをやめてしまうこともありました。
本書では、まずは読み通す。難しくて理解できない、わからない単語が出てきても無視。手や指を使ってなぞるように読んでいきます。返り読み禁止。英語の音読でも後ろから遡らず読めるようにすべきと言われたことがありますが、日本語でも同様です。
分析読書でも読み方レベルを使い分ける
「分析読書」の第一〜第三段階、規則1〜15を満遍なくできれば理想だと思いますが、学生でもない限り時間的に厳しいです。すべてをやるのではなく、自分に合った読書方法を試行錯誤していくのが良いと思いました。
『アーキテクトの教科書』の著者である米久保剛氏が『本を読む本』を技術書に応用した方法について紹介しているスライドがあるので参考になります。
本書の内容自体がかなり難解
読み慣れていないと本書の内容自体を理解するのに時間がかかります。私も読み慣れていないので本書を読み砕くのに時間がかかりました。それでもまだ理解しきれたとは言えません。本書独自の表現(「著者と折り合いをつける」など)はまだ馴染みがありません。きっと読書のレベルがあがって再読するときには理解できることも増えていることでしょう。
最後に
この本を読んだ後に、書店で読書方法に関する書籍を何冊か立ち読みしましたが、本書で書かれている内容でおおよそカバーしていると感じました。書店で売られている書籍は具体的な方法について書かれているので、理解を助けるにはよいかもしれませんが、大元の読書方法について理解したい人はまずはこの本を読むことをお勧めします。
