9月30日にNHKプラスが終了して10月1日からNHK ONEとして新しいサービスが開始されました。それにともないアカウントもNHK ONEに切り替える必要があるのですが、この移行でトラブルが発生していました。認証コードのメールが届かない人がいたり、認証コードを入力しても認証が完了しない人がいたりと、システム面の不具合も目立ちました。
原因はGmail側でスパム扱いされてブロックされてしまったとのこと。システムを運用・保守する身からすると準備不足は否めませんが、システム不具合はある程度仕方がない部分もあるでしょう。準備不足や想定外の要因は、完全にゼロにすることは難しいです。ただ、私が問題視しているのは移行期間がまったく設けられなかったことです。
通常のサービスであれば、旧アカウントと新アカウントを一定期間併用できるようにし、その間にスムーズに移行するようユーザに促すのが一般的です。しかし、NHKは10月1日に一斉移行を行い、NHKプラスでは視聴できなくなりました。その結果、録画や視聴に支障をきたした人も少なくないはずです。NHK側の対処によってアカウントなしでもNHK ONEアプリから視聴できるようになりましたが、履歴やお気に入りなどが保存されないなど不便な点が残ります。
なぜ移行期間を設けられなかったのか。10月1日からの放送法改正に伴う必要性があったからとのことですが、それはあくまでNHKの都合です。ユーザーにとって大事なのは「今まで普通に使えていた機能が突然使えなくなった」という事実であり、法改正の事情などは知っちゃこっちゃありません。
さらに残念なのが、NHK ONEのアプリがiOS 16以降しか対応していないこと。Apple自身はいまだにiOS 15のセキュリティアップデートを提供しているにもかかわらず、iOS 16に対応していないiPhone 6s、iPhone SE (第1世代)、iPhone 7はアプリをインストールできません。
iOSの対応バージョンを上げることは、今まで使えていなかった機能が使えるようになったり、提供側の開発・運用コストが削減できたりと、メリットもあります。しかし、それは提供側の都合であり、ユーザーから見れば今まで普通に使えていたのに突然使えなくなった、という印象しか残りません。
サービスを開発・提供する側の都合をユーザーに押し付けすぎてはいないかを問いかけたいところです。
ゲームディレクター桜井政博氏のYouTubeチャンネル『桜井政博のゲーム作るには』にも「すべて遊び手ベースの視点を持つことが大事」「プレイヤー第一で考える」と主張されていました。
私たちのようなシステム開発・提供する側にとっては、利用するユーザーのことを第一に考えるべきでしょう。もちろん、仕様やスケジュール、機能面での制約により、すべてをユーザーに振り切ることは難しいかもしれません。しかし、そのときにも自分たちの都合を押し付けすぎていないか、そのトレードオフを計ってみると良いかもしれません。
私たちのようにサービスやシステムを開発する立場の人間は、どうしても自分たちの都合に流されがちです。効率化や技術的制約を理由に仕様変更を行ってしまいがちです。しかし、それによってユーザー体験が損なわれてしまえば本末転倒です。
今回の件を通して、開発者は常にユーザー視点に立ち、提供側の都合で不便を押し付けることのないよう、自戒しながら取り組んでいかねばならないと強く感じました。