本日も乙

ただの自己満足な備忘録。

”逃げ上手”から学ぶ、生きていくために必要なこと

先日、『逃げ上手の若君』を全巻一気読みしました。というか、してしまいました。 松井優征氏の漫画は『脳噛ネウロ』『暗殺教室』すべて読破するぐらい好きなのです。"逃げ上手"はあまり読めていなかったのですが、一旦読み出すと止まらない。

学校で学んだ歴史は記憶の彼方に飛んでいってしまいましたが、とても読みやすい。歴史的背景なども所々で解説されているのにもかかわらず、歴史マンガにありがちな解説が多すぎることもない。登場人物すべてキャラが濃く(あるいは極端にキャラを薄くする)描かれていますが、監修が入ってちゃんと取材をしていることから史実に基づいた描写がされているのだろうと思います。すべて本当かわかりませんが。

鎌倉時代から室町時代にかけて描かれています。武士の生き様といえば、恥をさらすぐらいなら潔く死を選びますが、主人公の北条時行は逃げることが好きであり、得意としています。"逃げる"を武器にいかにして足利尊氏と戦っていくか、その展開が面白いです。

中でも好きなのが、"逃げ上手"の北条時行が、敵の立場でありながらも"逃げ上手"の師匠といえる楠木正成に教えを請うシーン。
以下に楠木の言葉を引用します。

弱者が強者に勝つ秘訣は、固定概念という囚われの檻から逃げることにござる。
刀が満足に使えなくとも、丸太をくりぬき籠城のための雨水を蓄えることはできる。
油を撒いて橋を燃やすことはできる。
糞を出して投げることなど赤子でもできる。
戦闘のための兵や武器、筋力や技術は・・・わずか一瞬発揮できれば、百倍の的にも勝てるのでござる。
 
常識、伝統、美学、成功体験、大兵力・・・
そういった檻に囲われた者は固く強いが、檻の隙間を突かれると逃げ場が無くとことん脆い。
弱者は檻に囚われるべからず。
卑怯や臆病と言われようが自信を持って逃げるべし!
 
鳥はなぜ自由で格好良う映るか?
この空すべてが逃げ場だからでござる!
縛られず、囚われず、広く高く雄大な逃げ道を常に征くべし!
逃げることは生きること。
この正成の信念にござる

「死が美徳」とされていた時代で、いかに逃げ延びること、生きることが大事かについて考えさせられます。
現代では「死が美徳」とはなりませんが、この先何が起こるかわからない時代です。私のような弱者が、強者に勝つためには、使えるものはすべて使う。揺るぎないものを作ったとしてもそれは固く脆く壊れやすい。固定概念に縛られずに生きるために何が必要なのかを知恵を絞ることの重要性は鎌倉時代から変わらないかもしれませんね。

 

松井優征(著)
集英社 (2021-07-02T00:00:00.000Z)